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2016/12/22

生きていくことと死ぬことと。黒沢清『トウキョウソナタ』

やっとのことでショッピングモールの清掃の仕事を得た父親は、スーツを着て通勤する。
ある日、床に貼り付いているガムを剥がしている。
そこに妻がやってくる。
父親は、長く勤めていた会社の職を失ったことも、清掃業に就いたことも秘密にしていたのだ。
父親は、その場から逃走する。




『トウキョウソナタ』はトウキョウに暮らすある家族がいちどバラバラになってしまったのち、再生する様子を描いたホームドラマだ。

でも、監督は黒沢清だ。

なので、ホームドラマではあっても、黒沢清流の不穏さがどこか漂う。


2016/11/24

『宇宙戦艦ヤマト2202』の予想は当たるのだろうか?

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』を予想した動画、というか、テキストである。

動画の形式で、文字をスクロールしているだけだ。
ブログでやらないでこういう形で文字情報を見せるのは流行なのか。





『さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち』という映画があった。

1978年公開の映画だ。

おそろしいことにざっと40年ほど前のアニメ映画の作り直しが決まった。
上記の動画は、その内容や設定について類推した文章をムービーにして見せたものだ。
二次創作ではない。そこまで行かない、いわば<設定ごっこ>をしているのだ。
こういう設定なら面白いんじゃないかな、と控えめに言っている感じだ。

2016/11/13

血と腐肉が飛散しまくる傑作『アイアムアヒーロー』

怖い映画が嫌いだ。だけど、大好きだ。

怖い場面だと顔を手で覆って、指の間から観て、「ひいっ」とか思わず言ってしまう。
怖さに震えながら、一方では怖さがもたらす快感に震える。
花沢健吾原作・佐藤信介監督の『アイアムアヒーロー』を観た。
何度も顔を手で覆ってしまった。


『アイアムアヒーロー』は、ZQNの描写が怖ろしい。
ZQNは「ゾキュン」と読む。
噛まれることによって感染し、発症する。
ほかの作品でゾンビと呼ばれる存在と同じものだ。
ZQNはおぞましい姿で彷徨し、人を襲う。
銃撃に遭って、ZQNは血液や腐肉をまき散らす。
ZQNは散弾銃を浴びて頭が消失する。
これほど夥しい血と肉泥にまみれ、生臭い臭いが充満していそうな映画を見たのは久しぶりだ。
ハリウッド製ゾンビ映画には、これくらい残虐な描写はないんじゃないか。

今や映画においては、残虐な描写が影を潜めてしまった。

単館がほぼなくなり、シネコン主体に移ってからはハリウッド製のブロックバスター大作やテレビ局や広告代理店が主導する大作日本映画が占めるようになった。
どちらも性的描写も肉体損壊のような残虐な描写などの刺激的な映像表現がない。
これは、全年齢の人が鑑賞できるように、との配慮だ。年齢制限のある映画だと観客の動員数が少なくなってしまう。
そうすると儲けが減る。
で、映画におカネを出した連中は、監督に対して規制に引っかからない描写に留めるようにと指示する。

銃撃はあっても人は倒れるだけ、閃光と轟音など、音響の効果は凝っている。
カタストロフを描く場合でも、建物や道路や橋は壊れ、クルマも吹き飛ばされたりするという派手な画が出てくる。しかし、それに巻き込まれる人の、無残な姿はない。

『アイアムアヒーロー』は、そういった流れに反する映画だ。
ZQNの、夢に出てきそうなおぞましい姿かたち、散弾銃で爆ぜる頭。
ほら見ろ、こういうのしばらく見てなかっただろう?
そんな声がスクリーンから聞こえそうだ。

これは映画の復権である。

テレビというメディアに対抗し、客を映画館に足を運ばせるには、テレビでは見られないものを作って公開すればいい。
そう言っていた映画人がかつてはいたが、こと日本では映画はテレビ局に膝を屈し、ついでに広告代理店や大きな芸能事務所にも媚を売った。
毒にも薬にもならない、バカにもわかるような映画がスクリーンを占め、わかりやすいを旗印にした、質の低い映画がスクリーンを占拠するようになった。

いい映画を観た。怖い場面だと顔を手で覆って、指の間から観て、「ひっ」とか思わず言いながらだけど、すごく面白かった。

世界がただならぬことになったことが明らかになる、長回しシーンの見事さ。
奇っ怪な姿になっても、かつて人間だった頃の習慣を繰り返すZQNの、おかしさと怖さが同居した振る舞い。
血と臓物が飛び散る中で変わり果てた妻と抱き合う中年男の哀切に満ちた最期。
そしてクライマックスに登場するあいつ。
物語の多くは巨大なショッピングモールで展開されるが、これはジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』に敬意を表したとも思える。

いい映画を観た。心からそう思う。
未来に明るい見通しをくれた映画だ。
これから、日本映画でおもしろいものがたくさん出てくるんじゃないかという大いなる期待を持った。

この映画は韓国の廃業したショッピングモールでロケをし、韓国のSFXプロダクションが参加して、すさまじいSFXを見せてくれた。
国という垣根を超えた映画の協業、どんどん出てくるといいと思う。ロケ場所も、映像技術も、音楽も、役者もどんどん越境していけばいいんじゃないだろうか。
その結果、面白い映画ができるのならば、いうことなしだ。






2016/10/20

高橋みなみ、カン違いの終焉。

元AKB48の高橋みなみというひとがいて、ソロデビューアルバムが売れなかったのだという。
名だたるアーティストに曲を依頼したというのに、世間の反応はさっぱり。
PVを見たけど、「シロウトのカラオケに毛が生えたみたいなもの」という感想以外持ち得ない。

http://www.cyzo.com/2016/10/post_29979_entry.html 


高橋みなみは、「外見では勝負しないけれども、アイドルをやっているひと」ということでいいのだろうか。
オシの強いブサイク。ブスを数十人集めて平均顔を作ったらこういう顔つきになるんじゃないだろうか。

アイドル業界でもブス専は幅を利かせているということなんだろうか?


2016/10/16

黒史郎『貞子VS伽椰子』 は映画の小説化ではない。

話題の映画で、原作小説や漫画がないものは、ノベライズされたものが出版される。
作品によっては、原作があってもノベライズが出ることがある。

ノベライズを立ち読みしてみると、映画と全く同じ筋立てで同じセリフで書かれていることが多い。
あとがきを読むと、「シナリオを元に大急ぎで書いた」などと記している書き手もいる。そういうことをあとがきに記すのも、そのまま載せるのも野暮な話だと思う。

白石晃士監督の『貞子VS伽椰子』は、2冊のノベライズが出版されている。
そのうちの1冊、黒史郎の作品は映画とはタイトルが共通しているだけだった。






『貞子VS伽椰子』 白石晃士の大エンターテインメント・ホラー

買いものをしに、香港に行った。

街を歩いていると、 『貞子VS伽椰子』のポスターがあった。
ネットで時間を調べてみたら、近くにあるシネコンでやってた。
前から見たいと思いながらも見逃してしまっていたのだ。
これは絶好のチャンスだと思ったので、観にいった。




『貞子VS伽椰子』を観終わって、とても楽しい気持ちになった。
クライマックスは得体の知れないエネルギーが充満しており、そのエネルギーを浴びたみたいな気がした。

貞子と伽椰子の対決という、かつてソーシャルメディアを賑わせたエイプリールフールの嘘記事の企画が本当に実現したのだ。
しかも、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズで一部で熱狂的な支持を集める白石晃士が監督という夢のような展開だ。



2016/10/10

見ると頭が悪くなる映画|ローランド・エメリッヒ 『2012』

<世界の終わり>を描いた映画は魅力的だ。

現実では目にすることができないものを画にして見せてくれる、それこそ映画のすばらしい点のひとつだ。
ただ、世界の終わりを魅力的に描けている映画は多くはない。


2012 スタンダード版 [DVD]

例えば、ローランド・エメリッヒが監督した『2012』を見る。
レンタルDVDなら、100円レンタルだ。

この映画の世界では全地球的な地殻変動の発生で、陸地がほとんど水没した。
人類が滅亡、中国のヒマラヤでひそかに建造された「箱舟」に残された人類が乗り込む。
この映画は<滅び>の景色が最大のセールス・ポイントになっている映画だ。

「マヤ暦によると、2012年に人類は滅亡する」という話が世界中に広まったためか、この映画は大ヒットを記録した。




2016/10/08

呪いの心霊ビデオと制作費と現場の貧困。


おわかりいただけたであろうか。

投稿型の心霊ビデオで、「霊」が映っている箇所をリピートする前にナレーターが必ずいうコトバだ。
これから、「霊」を見せて説明するよというサインである。

 「おわかりいただけたであろうか」は、『ほんとにあった!呪いのビデオ』初期からナレーションを担当してきた中村義洋が最初に使ったのではないかと記憶する。
中村義洋は映画監督として名を成して、話題作を手がける人だ。
いま、他の心霊ビデオでもナレーターは 「おわかりいただけたであろうか」と判で押したように言うのだ。

ちょっとばかり「おわかりいただけたであろうか」を見てみよう。



おわかりいただけたであろうか。
UFOが出現したのでビデオで撮影していたら、脚が映った。このビルではかつてOLの飛び降り自殺があったという。
なお、UFOも映っているそうだ。


おわかりいただけたであろうか。
防波堤で釣りをしていた人がビデオ撮影していて、偶然捉えたのである。


おわかりいただけたであろうか。
廃墟となった遊園地の、もう使われていないロープウェイを撮影したところが、窓から覗き込む何者かが映ったのである。




レンタルDVD屋さんには「心霊」のコーナーがあって実話系/実録系ビデオが置いてあるはずだ。
霊がこんなに撮られているのだ。

すごいと思わないか。

映画はメジャーな娯楽ではない。

「映画見てますか」
「はい」
「『シン・ゴジラ』はご覧になりましたか」
「あれ、映画館でやってるんですよね。テレビでやったら観ますよ」

大ヒット映画があったとしても、世間ではこういう会話がかわされている。

映画館で映画を鑑賞することは、日本ではマイナーな娯楽でしかない。






日本人の約7割・8580万人もの人びとは、映画館に行かない。

月に1回以上・年間28本映画館に行く人と、月に1回映画館に行く人が映画という娯楽産業を支えているのだ。

平日、映画館に行くとガラガラであることが多い。
土日とか、長い休みの時期とか、ブロックバスター映画が公開された直後くらいは人で埋まるけれども、平日はそんなに人がいない。
これで経営が成り立つのだろうかと、首を傾げたくなる。

2016/10/05

『キューティー・ハニー』もリブート。『CUTIE HONEY –TEARS-』

『キューティー・ハニー』がまたもや映像化された。
『CUTIE HONEY –TEARS-』というタイトルで、実写映画としては、2004年の庵野秀明版以来だ。
庵野秀明が『シン・ゴジラ』として『ゴジラ』をリブートした年に、東映は『キューティー・ハニー』を再び作った。

『キューティー・ハニー』というと、ヒロイン・如月ハニーのエロいシーンくらいしか期待されていない。
マンガには変身途中で裸になるという決め事があるのに、映画にはそれがない。

今回の『CUTIE HONEY –TEARS-』は、ダメだ。







恐怖の視聴者投稿心霊ビデオを見ませんか。

投稿者の近所には、人の住んでいない家があるという。

過去にこの家に住んでいた男が幼児を連れ込んでイタズラし、その後皮膚を剥がして殺害したとのだという。しかし、新聞などの記録はない。
小さな子供が通るとこの殺人犯の霊が子供をさらってしまうという噂がある。
投稿者は、面白半分に幼い妹を連れて友人とこの家で肝試しをした。



そして、怪異に遭遇するのである。



2016/10/02

非日本映画的な日本映画『シン・ゴジラ』

『シン・ゴジラ』は凄まじいスピードで私たちを非日常に連れ去る。
私たちは、劇中にいる人々が感じるであろう恐怖や諦念や絶望を共有しつつ、終局に安堵しつつ映画館を出る。




『シン・ゴジラ』は情緒的な場面と絶叫と泣き叫ぶ人と無駄なセリフや物語を停滞させてしまう愁嘆場がない。ヘタクソなタレントだかアイドルが稚拙な演技で泣き叫んだりするような遅滞が一切ない。
怖ろしい情報量のお話を、人を惹き付ける映像、ときに怖ろしい映像で描ききった。

誰も見たことのないお話を誰も見たことのない語り口で2時間にまとめた。
すばらしかった。
「日本映画らしからぬ」という、褒め言葉にも貶す言葉にもなるフレーズを、この映画に対しては賛辞として使うことができる。





2016/09/30

『宇宙戦艦ヤマト』の宇宙はとても変だ!

『宇宙戦艦ヤマト』における<宇宙>について考えたい。

『宇宙戦艦ヤマト』の最初のテレビシリーズでは、はるか14万8千光年のかなたにある未知の惑星・イスカンダルを目指す旅が描かれた。
広大な宇宙を旅し、次々と遭遇する脅威とそれに立ち向かう沖田十三以下、乗組員の奮闘に私は夢中になった。
「ヤマト」は、<強大なガミラス帝国に単艦で挑むヤマトの戦いの物語>がメインであると捉えている人は多いだろう。

そうだろうか。

個人的には<宇宙探検もの>という古典的なSFの風格を備えた物語であることが強く印象に残っている。
わたしはそこに深く魅入られてしまった。『宇宙戦艦ヤマト』で描かれた宇宙は、魅力それまでの国産映像作品には見られなかったものだった。
14万8千光年という気の遠くなるような距離、未知なる驚異に満ちた宇宙の姿、見たことのない世界をしっかりと見せてくれた。

往復29万6千光年の旅の物語は終わった。
しかし、ヤマトはその後何度も宇宙に向かって旅立つことになる。
で、ヤマトが征く<宇宙>の姿は違って見えた。



恐怖に浸る快感。残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―

幼いころ、母の実家でよく夜を過ごした。


母の実家は大きな木造の家で、雨戸を閉めると真っ暗になる2階で寝た。
静かな中、ミシっと音が鳴ったりすると私はびくりとした。
廊下に明かりがなくて、トイレに行くのも怖かった。






寝付けないと、布団をすっぽりとかぶって目を閉じてなんとか寝ようとするが、幽霊が部屋の何処かにいることを想像して震えたりした。暗い空を漂っていた幽霊が、木戸と木戸の隙間から入り込んで浮遊している様子とか、近くの浜に佇む幽霊とか、色々想像していた。
『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』を見ながら、そんなことを思い出した。


中村義洋監督の『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』は、怪異を引き起こす【穢れ】を探すおはなしだ。
『住んではいけない部屋』が【穢れ】た理由を究明するおはなしだ。

2016/09/28

『仮面ライダー1号』藤岡弘、大独演会。

『仮面ライダー1号』という映画を観た。
仮面ライダーをやってかれこれ45年の藤岡弘、の主演作品である。



冒頭、タイの飯屋で合掌して「ごちそうさまでした」と言ったあと、からんできたチンピラどもを叩きのめしてチカラをアピール。




店を出た直後、藤岡弘、はううっと胸を押さえてさりげなく<体調が悪い>ことを明示する。財布に忍ばせた写真は、おやっさんこと立花藤兵衛の孫娘である。



豪華仮装大会!『テラフォーマーズ』

『テラフォーマーズ』は、有名な俳優がみんな昆虫に変態して、ゴキブリと闘う。
これが見ていて楽しい。

ゴキブリといっても、火星環境に適合して進化したヒューマノイドタイプのゴキブリ=テラフォーマーである。ものすごく強くて、繁殖力が強いらしく、夥しい数になって襲ってくるのだ。
50年代SF映画に出てくるモンスターを、CGで描きなおしたような不思議な質感が魅力的である。これが主役のセリフやアクションを待って行動するのだ。好ましい。
有名な俳優も人気俳優も昆虫に変態した姿で殺陣に挑む。ゴキブリの前に次々と負けてしまい、ハデな肉体損壊を披露してくれるのだ。
子供が昆虫を捕まえて手足や首をもいだりする、あの残酷さを連想するような映像が続けざまに登場する。

実にすばらしい。






2016/09/27

『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』と老人たちと掲示板と長いテキストと妄想

『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』は、2017年2月25日から一部の映画館でのイベント上映とネット配信が開始されるのだそうだ。
2月25日。
国連軍に反旗を翻してヤマトが飛び立つならば2月26日に上映開始したほうが、それっぽくていいんじゃないかと思った。


















『宇宙戦艦ヤマト 2199』と同じビジネスをしようという算段だ。
26話からなるテレビシリーズを7回に分けて上映、劇場先行版Blu-Rayやマーチャンタイズ商品を高値で売りつける商売である。
『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』などというものは、言うまでもなく老人と老人に近い中年しか劇場に来ないので、連中からできる限りカネを巻き上げるというものだ。
バンダイは『機動戦士ガンダムUC』でそこそこ金を持っている高齢のアニメファンからカネをとる手法を確立した。あと10年くらいはカネを生みそうな気もする。




『宇宙戦艦ヤマト 2202 愛の戦士たち』は果たして期待されているのだろうか。
ネットを検索してみる。