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2012/04/29

峰不二子という女 ー 慶祝脱宮崎ルパン

新しいルパンの話をしたい。















「LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜」第1話を見て、そのすばらしい出来と、予想もできなかった方向性の提示に驚いてしまった。「LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜」は、40年かけてでき上がった「ルパン的ななにか」=ルパンのパブリックイメージをものの見事に打ち壊し、<新しいルパン>を提示している。とりわけなかば定着していた「ルパン=宮崎駿」の匂いが微塵も感じられないのが、すばらしい。
宮崎駿は、この番組を見て数分でふん、と鼻を鳴らしてテレビを消したことだろう。

まず、画づくりがいい。暗く、汚い画面なのがいい。
一定しない描線、意図的にラフなカゲ線を多用してわざわざ画面に汚しをいれて暗い画面を作っている。
汚れて見える画面は、菊地成孔のJazzとも相まって、どこかしら70年代的な郷愁を誘う。
でありながら、レトロ感はない。
むしろ、トンガッた映像とさえ言える。















これは、現在の日本アニメに対するアンチテーゼである。
アニメ制作はデジタル化されて以降、アニメの画面は概ね綺麗になってしまった。
昔は、動きのががたつき、セルアニメ特有のゴミやホコリ、作画の破綻などで、汚ないアニメがたくさんあった。「宇宙戦艦ヤマト」や「マジンガーZ」など、今見返すとおそろしくラフである。
セル作画からPC上での作画に移行、1コマずつ撮影するフィルム撮影がなくなって、デジタルで処理されるアニメは圧倒的にきれいな映像になった。
おまけに描線がきれいで、カゲ線もつかない、あっさりしたキャラクターがイマドキのアニメの主流になっている。
で、似たようなアニメばかりになっている。市場をリサーチして財布の紐がゆるい層に向けて企画を立てれば、そうなる。

「LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜」は、そういう流れを無視して登場した。<萌え>とは真逆の粗いタッチと暗さの多用で。
キャラクターデザインと作画監督は、小池健。マッドハウスで川尻善昭監督の下で仕事をしてきた実力派で、アメコミの影響が強い、クセのある画を描く人である。これまでのどのアニメ版ルパンとは異なるタッチは、好き嫌いがわかれると思う。
おれっは、大好きだ。

見て、もしかしたら出崎統監督へのリスペクトがあるのかな、と感じた。映像表現で、虫プロの「あしたのジョー」のスタイルを取り入れているのではないか。
暗さの表現、荒々しい描線、カゲ線。
マッドハウスは出崎統が設立したプロダクションで、川尻善昭も虫プロ−マッドハウスと行動を共にした。川尻善昭の師事した小池健は、出崎統のスタイルを継承しているという気がしないでもない。
















 「LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜」は、映像としてとても印象的でインパクトがある作品になった。
それ以上にインパクトがあったのはキャラクターの設定だ。
今までのルパンとは違って、どの登場人物も「悪漢」であり、インモラルであり、暗さを内側に湛えている。画面の暗さと登場人物が呼応しているのだ。
ルパン、次元、五エ門、それぞれが陰影に富んでいる。
銭形警部もダークな顔を隠さず、女泥棒と寝るゲスっぷり。 しかも、バイ・セクシャルであるらしいことも暗示されている。
そして、峰不二子。自分の美貌と肉体を武器にする女。目的のためなら平気で男と寝る。そんな様をしっかり描写している。

「ルパン三世 カリオストロの城」以降、世間で定着したルパン像=心優しき義賊というパブリックイメージ、宮崎駿が描いたルパンに決別したことには快哉を叫びたい。

<悪>であること、背徳と放埒と自由、ルパンなのだから。


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2012/04/26

ヤマト復活篇は10数年前にオワコン決定

西﨑義展が服役している間、支援者とおぼしい人が、下記のコンテンツを発表していた。


『宇宙戦艦ヤマト・復活篇』西崎構成稿 基本構成案

平成5年(1993年)に発表された構成案が、ほとんどそのまま映像化されていたことに驚く。
映画の公開は2009年、16年の間凍結されていたものを解凍し、手間を加えなかったということに驚く。<原案>の石原慎太郎の稚拙なナショナリズムを反映している、くだらないストーリーに異議を唱える者はいなかったわけだ。
「いま、どんなアニメが受けているのか」を省みない、マーケティング的な視点がかけた愚作は、世に出て失笑を買って終わった。



音を変えるだけでぐっと良くなった、復活篇のヤマト発進シーン。

宇宙戦艦ヤマト2199のビジネスを邪推する

ファンから搾り取れ。それこそヤマトの商売だ。

宇宙戦艦ヤマト2199BD&DVD第1巻ヤマトクルー限定版予約開始!


はい、ヤマトらしい商法ですね。限定品。
オフィス・アカデミーの頃より、ファンから搾り取る商売は健在。
だって、アマゾンではこんな価格で買えるんだから。ただでさえ高いバンダイのBlu-Ray/DVDに3000円のっけて売ろうっていうんだものな。




「ヤマトクルー」は5万円の「宇宙戦艦ヤマト復活篇コンプリートBOX」を売り出すようながめつい物販サイト。でも、1万セットのコンプリートBOXが完売というのは驚いた。ヤマトファンは金持ちなのか、他のことにカネを使わないのか?
ヤマトクルーは故・西﨑義展の会社ボイジャーエンターテイメントが運営しているんだけど、
「宇宙戦艦ヤマト2199」は今はなきオフィスアカデミーがやったような商売をトレスしていくのだと思う。
「宇宙戦艦ヤマト」では上中下の3巻からなる「宇宙戦艦ヤマト全記録集」というものを出した。1巻あたり1万円、3巻で3万円。これは1978年当時の価格。
これはアニメの資料本としては空前にして絶後なんじゃないだろうか。

オフィスアカデミー発行 宇宙戦艦ヤマト全記録集

「宇宙戦艦ヤマト全記録集」はのちに「普及版」が発売された。
普及版はどこかで見た記憶がある。友人の家だったか?それとも神保町の古本屋で特価品を発見して立ち読みしたのだったか?
古本が出回ってる。ヤフオクにも出品されているようだ。
宇宙戦艦ヤマト全記録集 (1978年)

当時、大半のヤマトファンはみのり書房の「月刊OUT」、徳間書店の「ロマンアルバム」あたりまでは手が出たが「全記録集」については、豪華本はおろか普及版だって買えなかったと思う。家庭用ビデオデッキはまだ出始めた頃でおそろしく高額だから、録画していた家庭はほとんどなかった。その代わり、テレビのスピーカーの前にラジオカセットを置いて録音していたヤツはけっこういたと思う。
おれはチャンネル権がなかったので、ヤマトは再放送で見ていた。

「宇宙戦艦ヤマト2199」、さっそく色々とグッズが出ている。
放映終了後は、高額な「宇宙戦艦ヤマト2199全記録集」や思い切り高額な「宇宙戦艦ヤマト2199コンプリートBOX」もたぶん発売される。それが10万、20万の値をつけたって驚くには当たらない。
ヤマトの権利を持つ会社として、オフィスアカデミー、ウエストケープ・コーポレーション、ボイジャーエンターテインメントはそういう商売をしてきたから。

もし、「宇宙戦艦ヤマト2199」が「宇宙戦艦ヤマト」懐かしさに集まってくるオールドファンしか引き寄せないとしたら、客単価を上げるしかない。それも思いっきり。オールドファンをくすぐって、ロイヤリティを高めて財布の紐をゆるめさせないといけないはずだ。
デスラー総統の名を冠したワイン、日本酒を同梱した復活篇コンプリートBOX、ヤマトの高額な1/350模型、プラチナペンダントなどは、明らかにオールドファンを意識したグッズだった。
これからの合言葉も「オールドファンをころがして、カネを獲れ!」だ。
可処分所得が豊かなオールドファンを想定した有料イベントが必要だ。貧乏なヤマトファンは相手にするな。
石破茂を呼んでトークショーとか、ささきいさおのディナーショーとか、豪華客船チャーターして船上ヤマト上映会とか、5万、10万でやればいいよ。




「宇宙戦艦ヤマト2199」は「機動戦士ガンダムUC」の
後につづく成功を収められるのか?


「宇宙戦艦ヤマト2199」は「機動戦士ガンダムUC」と同様のビジネスモデルである。
つまりは以下のとおりだ。

・収益の柱はBlu-Ray/DVD販売
・全国でイベント上映を実施し、会場限定版のBlu-Rayを販売
・有料でネットワーク配信
・CS/BSで有料放送(しんがりは地上波)
・海外展開

「2199」については、海外展開は現時点では不明。
ただし、ボイジャーエンターテインメントは、アメリカのヤマト・ファンサイト

○機動戦士ガンダムUC 【全 巻】
01巻 BD 114,566枚 DVD 69,160枚 ※合計 183,726枚
02巻 BD 115,238枚 DVD 68,077枚 ※合計 183,315枚
03巻 BD 113,202枚 DVD 63,109枚 ※合計 176,311枚
04巻 BD 116,782枚 DVD 65,021枚 ※合計 181,803枚
(出典:アニメDVD・BD売り上げまとめwiki

この数字から類推するに、「機動戦士ガンダムUC」は、オールドファン、つまりテレビの第1シリーズ〜「逆襲のシャア」のファンをカバーしたことに加えて、新しいファンを獲得している。売上では単価が高いブルーレイが主導しているのもポイント。
「宇宙戦艦ヤマト復活篇」はDVDの比率が高い。つまり、客単価が低い。

ヤマトはどうだろうか?

「宇宙戦艦ヤマト2199」は第1話、第2話のイベント上映が終わったばかりであり、Blu-Ray/DVDの一般発売を待っている状態だ。
Blu-Ray/DVDの第1巻がどれくらい売れるのか明らかでない。
第1巻のセールスはとっても重要だ。
懸念を感じるのは、予想される顧客の数が「宇宙戦艦ヤマト復活篇」公開時の観客動員数、もしくはそのBlu-Ray/DVDを購入した人の数(合計で4万枚くらいだったようだ)だとしたら、かなりきびしいビジネスになりそうだということ。
なお、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」公開時の観客動員は明らかにされていない。200を超えるスクリーンで公開されたのに興行収入3億8879万4600円、配給収入は不明という惨敗ぶり。20万人前後と推定する。

第1巻が売れないと、3巻あたりで打ち切りという可能性だって否定できない。
果たして、新規顧客は食いつくだろうか?
それともそれは果たせず、可処分所得が高いオールドファンから搾り取る戦略を採らざるを得ないのか?

どう思う?



2012/04/25

中国特撮ドラマ&美少女:Armor Hero

新浪、捜狐などの中国のポータルサイトは、こぞって動画の配信に力を入れていて、映画やテレビドラマをバンバン配信している。
近年、日本では中国文化圏の映画をあまり公開してくれないので、こういった状況はとてもありがたい。しょっちゅうアクセスして新作の映画をチェックしている。回線の状況も悪くなく、ストレスなく視聴できている。
おもしろそうな映画が日本では話題にすらならず、公開も期待できない現状をおおいに憂いているけれども、その不満解消に役立ってる。

例えば、香港のニコラス・ツェー&台湾のジェイ・チョウという2大スター共演のアクション映画「逆戦」を見られるとか、いい感じ。




http://tv.sohu.com/20120411/n340296063.shtml#4413

こういうのだって見られるんですよ。

http://tv.sohu.com/20090216/n262268371.shtml

仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦 2010 [DVD]


仮面ライダー×仮面ライダー OOO(オーズ)&W(ダブル) feat.スカル MOVIE大戦CORE【DVD】

さて、特撮ドラマが好きだという方はとっくにご存知かもしれないけれど、中国の特撮ヒーロードラマを紹介したい。
その名は铠甲勇士(Amor Hero)。日本からスタッフを招いて作られたメタル・ヒーローもので、平成仮面ライダーシリーズにインスパイアされたような作品だ。
言葉はわからなくても、見ていればなんとなくわかると思う。




お約束の美少女も出ているし、おヒマなときにでも、見てみてね。
中国のアイドル、若手女優も出てるし。




http://tv.sohu.com/s2010/kaijiays/#pageHot


2012/04/24

松本零士のいない宇宙戦艦ヤマト2199

「宇宙戦艦ヤマト復活篇」、実写版「SpaceBattleship ヤマト」、そして「宇宙戦艦ヤマト2199」
そのいずれにも〈松本零士〉の名はクレジットされていない。

著作権を巡る裁判と和解を経て、松本零士は新作の「宇宙戦艦ヤマト」には一切関わらないということになったようだ。おそらくは松本零士もそれを強く望んで、クレジット表記を拒んだのではないかと推測する。
とはいえ、「宇宙戦艦ヤマト2199」では、松本零士のテイストがかろうじて残っている。デザインを継承し、それらをリファインしているのだから当然ではある。メカデザイン、一部の登場人物に松本テイストを感じる。
「宇宙戦艦ヤマト」第1TVシリーズは様々な人たちのアイデアの集積でできているが、ヴィジュアル面の設定をつくった松本零士のカラーが強く出るのは当然である。(設定・松本零士、クリーンナップ・スタジオぬえという組み合わせは実にすばらしかった)
「2199」では第1TVシリーズを尊重しつつ、ヴィジュアル面でも大胆な再構築もしくは改変をしてほしいと思う。
冷静に考えれば、松本零士的なものは古臭くて、賞味期限切れしたもので、カネを生み出せるものとは言えないとも思う。


松本零士と賞味期間


1974年の「宇宙戦艦ヤマト」参加をきっかけに、松本零士はアニメの世界にどっぷり浸かっていった。1979年の「銀河鉄道999」大ヒットで「松本零士ブーム」が到来、立てつづけにアニメ作品に関わるが、映画「わが青春のアルカディア」が興行的に失敗し、そのTV版「わが青春のアルカディア 無限軌道SSX」も視聴率が振るわず、途中で打ち切りとなり、ブームは終焉する。
わずか数年で松本零士は消費され尽くした。




しかし、パブリックイメージとして「アニメ界の巨匠」と見られていて、以後もメディアに登場すると「アニメ界の巨匠・松本零士先生」と呼び習わされていたように思う。それを見聞きするたびに違和感を覚えた。
アニメの現場にいるクリエーターに失礼な言い方だからだ。
ストーリーの大枠と何枚かの設定とイメージ画を描いてアニメクリエイターと名乗られてもどうかと思う。実際は、表に出てこない現場のスタッフの努力によって支えられているというのに。

いわゆる「松本アニメ」の隆盛期は、1977年の『宇宙戦艦ヤマト』劇場版から1983年の『宇宙戦艦ヤマト完結編』までの時期。ピークは1979年の『銀河鉄道999』劇場版。
1980年代に入って、宮崎駿、押井守が登場し、新しい才能も次々アニメ界に入ってきた。アニメファンは「松本アニメ」への関心を失っていく。

では、マンガ家としてはどうだったか。
アニメにのめり込んで以降、本業のはずのマンガは画が荒れ、内容もスカスカなものになっていった。もとより伏線を回収することなく終わったマンガ、未完に終わったマンガが多い人で、「銀河鉄道999」すら未完である。加えて、荒れた画、手抜きである。
何ページにもわたって宇宙空間を航行する宇宙船が描かれ、ポエムのような口上が書かれて十数ページを消費する。宇宙船はコピー機で拡大もしくは縮小したものを貼りつけただけ。あるイベントで松本零士の原画を見て、心底驚いたものだった。コピーを貼って、周囲を塗りつぶしているものを展示する神経を疑った。





「新宇宙戦艦ヤマト」と「大YAMATO零号」


2000年になって、「新宇宙戦艦ヤマト」がアニメ映画化されるという話が出てきた。ベンチャーソフトというIT系の会社が制作し、勝間田具治が監督するという情報が流れた。ベンチャーソフトのウェブサイトには会社設立記念パーティ席上で制作を発表したと書いてあった。すでにベンチャーソフトはないが、パーティ参加者のサイトでこのことについて触れられている。

http://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/reishi.htmhttp://homepage1.nifty.com/akk-yihitk/reishi.htm



同名のマンガを立ち読みして、クラクラ来たのを思い出す。
舞台は旧ヤマトの時代から1000年後の未来、正体不明の移動性ブラックホールが多数出現するという危機に、ヤマトが目覚める。古代進32世はじめ、かつてのヤマト乗組員の子孫たちが結集する。艦長は(もちろん)沖田十三。
なお、このヤマトはグレートヤマトと呼ばれ、旧ヤマトよりはるかに大きな宇宙戦艦に生まれ変わっている。
しかし、著作権裁判・和解を経て「新宇宙戦艦ヤマト」は没となった。 移動性ブラックホールというアイデアは、『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』の核となるアイデアでもある。 『完結編』後、90年代はじめの『復活篇』構想のアイデアは西崎・松本零士双方で使ってもいいという約束にでもなったんだろうか。 「新宇宙戦艦ヤマト」の代りに「大YAMATO零号」というOVAが作られた。 そして、さして話題にもならないで終わった。
「松本零士」という名前は、儲けをもたらさないものになっていた。









「宇宙戦艦ヤマト」の創りてだった松本零士がパチモノに手を出したというのがじつに趣深い。で、このアニメのパチンコ台「CR大フィーバー大ヤマト」は 大ヒットして莫大な利益をもたらしたのだという。
最近、知って驚いたのだけれど、松本零士は「Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-」というアニメの新作に関わっている。
2013年に映画として公開されるのだという。

http://anime.com/Yamato/Leiji_Future_2011.html


2013年はとっくに過ぎた。 残念ながら、「Cosmo Super Dreadnought まほろば -超時空戦艦-」は企画だけで終わったようだ。

松本零士、じつは「宇宙戦艦ヤマト」を創りたいんだろうなあ…
クリエーターって、処女作の変奏曲を延々と作り続けるっていう説は当たっているのだと思う。

2012/04/23

宇宙戦艦ヤマト2199についての邪推

「宇宙戦艦ヤマト2199」の第1話を観た。
面白い。興奮した。
とても丁寧に作られており、テンポが早くて旧作よりも情報量がぐっと増えた。
旧作への敬意も感じられるのも、とてもいい。
個人的には、旧テレビシリーズからの大胆な再構築を強く希望する。旧作をキレイな画でトレスしただけでは面白くない。物語も変わるべきだ。
とくに、ヤマト一隻でガミラス帝国が滅ぼすというような筋立ては変えるべきだと思う。
(そのへん、ガミラス側の配役に何らかの仕掛けがあるような気がする。Galectica的ななにか)

さて、今回のエントリーではクレジットを見て気になったことを記したい。
これがエンドクレジット。


企画に石川光久の名がある。















「宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会」のなかに、プロダクションIGとジーベック(XEBEC)が加わっている。プロダクションIGとジーベックは石川光久が社長をつとめる「IGポート」のグループ会社である。

ジーベックは、「宇宙戦艦ヤマト復活篇」でアニメーション制作を担当したが、制作費未払いの憂き目に遭った。

『宇宙戦艦ヤマト 復活編』の制作費未払いのせいで、アニメーション制作会社XEBECが倒れそうな件について

当社の子会社である株式会社ジーベックが、制作の一部を受注いたしました劇場用アニメーション作品の制作費の一部146 百万円の売掛債権が、再三にわたる督促にも係わらず、発注元より支払いがなされておりません。そのため、発注元の状況等を検討の結果、制作費146 百万円につき貸倒引当金を計上する見込みであります。当社グループといたしましては、今後、法的手段も含めまして、回収に努めてまいります。

ここで宣言されているとおり、1億4千6百万円の未払いは満額とは行かないものの半分以上回収ができたようだ。

特別利益の発生及び業績予想の修正に関するお知らせ

また、「宇宙戦艦ヤマト2199」にプロダクションIGとジーベックが制作者として参加を果たした。アニメーション制作も当初担当するはずだった南町奉行所や東京キッズの名が外れてジーベックとAICへと変更された。
石川光久というひとはタフ・ネゴシエーターとして知られる辣腕プロデューサー。
未払金回収交渉と同時に、「宇宙戦艦ヤマト2199」に関与し、権利を獲得していったのではないか。
としたら大したものだ。
なお、企画でクレジットされている「西崎彰司」は西﨑義展の養子で「宇宙戦艦ヤマト復活篇」を制作した株式会社エナジオの代表取締役である。エナジオの名は「ヤマト2199製作委員会」のなかにはない。制作費未払いとの何らかの関係があるのだろうか?
あるいは「ヤマト2199製作委員会」にクレジットされている西﨑義展の持っていた会社「ボイジャーエンターテインメント」名義で参加しているのだろうか。



「復活篇」とは違って、「宇宙戦艦ヤマト2199」はコンテンツとして優れている。市場価値も高いのではないだろうか。
また、プロダクションIGは良い作品を創ろうとする姿勢がしっかりしている。現場のクリエーターを尊重している。
だから、新しいシリーズには期待ができる。

西﨑義展、松本零士の関与がなくなり、「宇宙戦艦ヤマト」に新しい道筋がつくだなどと誰が想像できただろう?
まして、「攻殻機動隊」を制作した会社とプロデューサーの手になる新作を目にする日が来るだなんて・・・

ただ、「宇宙戦艦ヤマト2199」が若い人を吸引できる作品になるのかどうか。
それはわからない。
90年代、ゼロ年代と、「人類救済」などという<大きな物語>はすっかり廃れてしまって省みられなくなった。
「新世紀エヴァンゲリオン」の大ヒット以降、「セカイ系」が席巻している。セカイ系とは「「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群」を指す。で、セカイ系の物語は、大抵の場合、世界の命運は主にヒロインの少女に担わされる。「戦闘を宿命化された美少女(戦闘美少女)と、彼女を見守ることしか出来ない無力な少年」という構図のおはなしが多い。
そういった物語を消費する人たちにとって、「宇宙戦艦ヤマト2199」は手が伸びないんじゃないかと思える。
「宇宙戦艦ヤマト2199」は基本、スペースオペラなのだ。1920年代に生まれ、40年代にはやった古くさい宇宙冒険活劇に源流がある。しかも、「地球を救う使命を帯びて 戦う男燃えるロマン」だしな。
さて、若い人は食いつくのだろうか?

あ。案外、セカイ系のヤマトになったりしてな・・・

2012/04/22

宇宙戦艦ヤマト2199へ到る長い道

まさか、本当になるとは思わなかった。
「宇宙戦艦ヤマト」の第1テレビシリーズがリメイクされる日が来るとは思わなかった。
「宇宙戦艦ヤマト2199」が制作されて、映画館でのイベント上映、ソフト販売と有料配信という新しいビジネスモデルで我々の前に現れた。
でも、その道程は長く険しかった。
それを振り返ってみたい。

はじまりは宇宙戦艦ヤマトだった

いま「宇宙戦艦ヤマト」の最初のTVシリーズを見ても、作画の稚拙さ、画面の汚さにはいささか眉をひそめたくなる。作画が統一されていないので、登場人物の顔が毎回変わるのもいただけない。
しかしながら、今は亡き宮川泰の音楽に胸が高鳴り、つい夢中になって見てしまう。
「宇宙戦艦ヤマト」の周辺には色々なことが起き過ぎて、スキャンダラスな面ばかりが目立つ。けれども私のような者にとっては、今でも胸がときめく宝もののような作品である。





今に到る「アニメブーム」のきっかけを作ったのは、間違いなく「宇宙戦艦ヤマト」だ。
人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」(宮崎駿と高畑勲、大塚康生が参加していた)の裏番組だったため、低視聴率にあえいだ挙げ句、全39回の放映のはずが半年で打ち切られ、13回分のエピソードは幻と化した。
TVシリーズを再編集して映画にし、こぢんまりと上映するはずが前売り券がバカ売れして、上映館を拡大してスマッシュヒットとなった。
しかも、10代後半から30代あたりの観客を動員してアニメ=子供のものといった図式を破ってみせた。アニメは子供のものという常識を覆すことになったのだ。
「ヤマト」は「機動戦士ガンダム」とともにアニメの創り手を生み出す原動力になった。
「ヤマト」を見てアニメを志した世代は、のちに「エヴァンゲリオン」をはじめ数々の作品を創り、現在の世界規模のアニメ・ムーブメントの発信源となっていった。「宇宙戦艦ヤマト2199」の総監督・出渕裕もヤマトにインスパイアされて業界に入った。
また、「ヤマト」は同人誌ブームの起点にもなった。全国各地に「ヤマト」のファンサークルができて、ファンジンがたくさんできた。今でいう二次創作のヤマトがたくさんあったと思う。で、ファンジンの創り手から、アニメーターやマンガ家も多数産まれた。
おたくムーブメントは、「ヤマト」に始まった。

一方で、「ヤマト」はスキャンダラスにまみれた作品でもあった。

松本零士監修 「宇宙戦艦ヤマト」 大クロニクル


宇宙戦艦ヤマト (ソノラマ文庫 4-A)


ヤマトと西崎義展とスキャンダルと

劇場版 2作目「さらば宇宙戦艦ヤマト」で彗星帝国の超巨大戦艦めがけて特攻をかけて消滅したはずのヤマトは、TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」で特攻をかけない結末となり、そこから展開するTVスペシャル「宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち」がTVスペシャルとして放映され、その続編として映画「ヤマトよ永遠に」が公開された。
そして、「宇宙戦艦ヤマト完結編」である。この映画の見所のひとつは、死んだはずの沖田十三が実は生きていたという、あっと驚くサプライズなのだが、死んだはずの人間が生き返るくらいのことで、もはや誰も驚きはしない。
(ちなみに私は全部見にいっている。しかも1作目と2作目は初日に徹夜して見た)

なによりもプロデューサーがスキャンダルの源だった。
西崎義展プロデューサーの自己顕示欲ムキだしの横暴さと、金の亡者ぶり、儲けた金を蕩尽する様子がメディアで伝えられて、ファンはおおいに失望したのだった。

西崎義展氏の死に対する岡田さんのコメント

TV版を編集して公開した劇場版第1作と「さらば宇宙戦艦ヤマト」まで、西崎義展の好感度は高かった。しかし、「さらば宇宙戦艦ヤマト」大ヒット以降は眉をひそめたくなるようなことばかりが目立ったように思う。
松本零士との確執も、ファンの知るところとなった。

西崎プロデューサーは儲けた金で豪華なクルーザーを購入。知人を招待して航海に出て、女性を仕込み、麻薬を決めながら乱痴気騒ぎをしていた。
クルーザーには銃火器類が隠匿されていたという。東南アジアの海を航行するので、海賊対策だったのだという。
そのクルーザーで石原慎太郎とともに尖閣諸島に上陸する計画があったとも聞く。
で、2回にわたって覚醒剤の不法所持で逮捕、服役。
出所後、スタッフを再結集して「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」を制作・監督するも興行的には大惨敗。
そして、実写版リメイク「Space Battleship ヤマト」公開を待たずに小笠原の父島で自分の会社が所有する船「YAMATO」から転落して死去。
毀誉褒貶の多い人物だった。
振り返ると、「海のトリトン」「宇宙戦艦ヤマト」「うろつき童子」以外の作品はことごとく失敗したプロデューサーだった。「宇宙空母ブルーノア」や「光子帆船スターライト」など、知っている人も少ないのではないだろうか。

漂流するヤマト


「宇宙戦艦ヤマト」最初のTVシリーズ放映から約30数年を経て、この10年ほどリメイクの話が浮かんでは消えるようになった。

西崎プロデューサーは舛田利雄監督や石原慎太郎などをブレーンに招いて構想を練った「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」を発表していた。1994年のことで、実際に映像化されるのはそれから15年後の2009年だった。
驚いたことに固有名詞などが一部変更されただけで、この当時のストーリーがほぼそのまま映像化されていた。








続きは、以下のリンクから。

ヤマト わが心の不滅の艦


迷走する松本零士

西崎義展の麻薬所持による逮捕・拘留の間に、松本零士は「新宇宙戦艦ヤマト」のマンガを連載を開始して、ベンチャーソフトというIT企業のバックアップのもと、作家などを集めて映画の企画を練り始めた。
旧ヤマトの千年後が舞台。西暦3199年、ヤマトは旧ヤマトの倍の大きさを誇り、かつての乗組員たちの子孫(しかも名前は同じ)が乗り込むという、オドロキのお話だ。

その後、松本零士は突如「ヤマト」の原作者は自分であるとする裁判を起こし西崎氏に謝罪を求めた。1審では原作者は西崎氏にあるという判決が出た。これによって松本零士サイドは「新宇宙戦艦ヤマト」制作を中止、新たに「大ヤマト」なる作品を制作すると発表した。これはDVDとして地味にリリースされた。



事実上最期の「宇宙戦艦ヤマト」となった「宇宙戦艦ヤマト完結編」の公開は1983年のことだった。
それから20数年の月日が流れた。
その間に、アニメは、驚くべき進化を遂げて、数え切れない収穫があった。アニメファンの大半は、「ヤマト」も松本零士も過去のものと捉えていたのではなかったか。
「機動戦士ガンダム」、「AKIRA」、宮崎駿のアニメ、押井守、「エヴァンゲリオン」など豊穣な収穫の中で、「ヤマト」は朽ちていった。

ヤマト再構築へ

おれにとって、そしておそらくは少なくない数のヤマトファンにとって「宇宙戦艦ヤマト」の第1テレビシリーズのリメイクは見果てぬ夢だったんではないだろうか。たぶん、出渕裕にとってもそうだったと思う。
おれは「パトレイバー」や「エヴァンゲリオン」、「攻殻機動隊」を見て、いまのアニメ技術でヤマトを見られたらと思ったりした。
PS2ゲームのムービーを見ては、このタッチでTVシリーズかOVAを夢想したものだ。(松本零士タッチのリファインとしては素晴らしいと思う、PS2ゲーム用ムービーは)






「宇宙戦艦ヤマト 復活篇」の興業的な失敗で、「宇宙戦艦ヤマト」リメイクは夢のまた夢かと思ったら、まさかの「宇宙戦艦ヤマト2199」。西崎義展も松本零士も関わらない「ヤマト」が世に出るとは。

世の中、どう転がるかわからないのが面白い。


高橋克彦 『1999年対談集』はすごい(3)

高橋克彦 『1999年対談集』、次はあすかあきお(現・飛鳥昭雄)である。
この人は著作も多く、オカルト方面では有名人。サイエンス・エンタテイナーを自称している。
この人は、マンガや著作で「秘密情報の暴露」をしている役割を担っているのだという。「教授」 と呼ばれる存在から情報を提供され、それを調理、加工してマンガや書籍で発表するのだそうだ。
例えば、超能力の手口を暴露したマンガを発表している。内容は、ユリ・ゲラーはアメリカ政府の下で情報操作をしているというもの。テレビを使って、日本にどんな反応が起きるかを実験した。影響や、国民性をチェックしたという。
今後、公表される「秘密」は、
ノアの箱舟が発掘されていたという事実。
太陽系に12番惑星が存在すること。

あすか 場所はーー言っちゃっていいのかな?
昔のSF映画なんかで使われているんですが・・・。丁度地球と同じ軌道で、太陽の向こう側なんです。まるでSFまんがのように感じちゃうでしょうけどね。
世紀末、1999年から21世紀はじめにかけて何が起きるかを問われて、あすかあきおは答える。
あすか 人類史が引っ繰り返る大変革です。それは・・・
ノアの時には水でしたけど、今度は火が来るんです。どんな形の火かというとーーー。核戦争もその前にあるんでしょうけど、そんなんじゃない火がーーー。
それで、その時助かる人もいるんですが、それは、ほんとうにそういう時が来るということを信じている人ーーー今、その「時」を信じていて、その時に、ある言葉に従った人ーーー彼らは別の場所に連れて行かれるんです。 それは、この地球上じゃない。
(中略)
あすか 僕が今、神というものについてあえて言うならば、宇宙人などとは違うーーー。宇宙人っていう言い方はおかしいですね。人類だって宇宙人なんだからーーー。
神というものについて、あえて言うならば『光』だと。そう言えるんだと思います。光の存在だと。それは宇宙人ではありません。その光の存在の下で動いているんです。
(中略)
焼かれる、そう、光の存在が来るんですよ。
 僕があえて警告したいのは、もう一方の、1999年前という可能性です。この場合は多くの人が、まだ時があるという気持ちから、「その日」のための準備を怠ることになります。その準備とは、光の存在に耐えられる心の浄化を図り、光の存在の高弟が準備する組織を捜すことです。その高弟たちは予言によるとすでに全世界の国々を訪れているはずで、彼らは予言者を頭に抱き、二人の補佐する者と12人の使徒と70人の教師を持つはずです。そして、その組織の中心は高い山の上にある・・・。このことはノストラダムスの予言の土台ともなった『ヨハネ黙示録』に代表される『新約聖書』の中の随所に記されてあり、予言の根幹を成すものです。
また、ほんとうに世が終わる寸前、エルサレムに現れ、全世界の軍隊に奇跡の技をもって挑む二人の若者も、この光の存在から送られてくる地球に送られて来る地球に属する者のはずです。彼らの使命は、光の存在について全人類に最後の証をすることにあります。そして、これが人類へのラストチャンスとなり、その後、全地は太陽を経てやってくる凄まじいエネルギーにより一瞬にして「炉の中」と同じ有様となるのです。

あすかあきおはモルモン教の信者。信仰しているモルモン教の教義に則っていて、読者相手に布教をしていたのだった。

世界には「光の存在」は来なかったし、滅びもしなかった。
ノストラダムスや1999年に関連する本を今読むととても面白い。
また、この手の本には新興宗教がらみが多く、これも読むと興味深い。

おもしろい記事を見つけたのでリンクしておく。

モルモン教・イルミナティの地下都市建設


予言

決定版 2012年マヤ予言の謎 (ムーSPECIAL)

梶原放送局 ゲスト:矢追純一さん、飛鳥昭雄さん

激論対決・小島露観VS読者

ぼいす OF ワンダー(『ワンダーライフ』第22号)

21世紀に向けての新たな政治体制、新たな存在のあり方を説く小島露観氏。
彼の説には、絶大な支持者と、完全否定論者との二極が存在する。
否定論者と対決したいという小島氏。「小島を叩きたい」という一部読者と、質問したいことがあるという数多くの読者。
それらを一堂に集めて、言論による対決がさる一月十八日、小学館の講堂で行われた。以下は、その様子を誌上再現したものである。

●編集部よりひとこと●
『小島露観との言論対決』を企画した編集部に対し、「対決したい」と申し込んできた者4名。「質問がある」という読者22名。言論対決を傍聴したいという人が40名いた。
ところが、フタを開けてみると、「対決」希望で当時も参加するはずだった2名が無届欠席である。事情もあるのだろうが、電話連絡くらいできたはず──と残念に思う。
当日は、山口県や大阪府、福島、新潟などからの参加者もあった。いっぽうで「私は遠方なので出席できない。だが小島露観の説には反対なので、私の書いた文を会の冒頭で読みあげてほしい」等というのもあった。自分の意見を、自分の口で、相手に直接言うことができるための会である。こういった卑怯なやり方は納得できないので、その手紙は破り捨てた。もちろん、来られない事情があることはよくわかる。来られないのなら、しかし、発言はできない。その「当然」を、ぜひご理解していただきたい。

──遠くは山口県や新潟県からはるばるやって来た人を含め、ワンダーライフの読者も六十名前後揃ってそろそろ始まりかと思われたその時である。
ドアを勢いよく蹴ちらし、今回の期待の星、青木氏登場! 彼は事前に“当日は棺桶持って来い!”という過激な文を小島氏宛に送っている。その姿は、タイガーマスクもまっ青の仮面(実は縁日で売ってるもの)に、パンクロック少年顔まけのスタイルであり、腕に突起のたくさん出た黒い皮ベルトをつけ、リングに上がったレスラーさながらに拳で手をパンパン鳴らし、落ちつきなくウロウロしたり、突然机に手をついて腕立て伏せを試みてみたり、ちょっと危い雰囲気である。会場の空気も一転して緊迫感がみなぎった。と思いきや、床に落としたスカーフを拾おうとして足を使うがうまく拾えないなど、お茶目な面も見せている。
本誌 ではそろそろ『小島露観と言論対決の会』を始めたいと思います。最初に、本誌は全く厳正中立な司会進行役に徹することをお断わりしておきます。では、小島先生をお呼びしましょう。
小島先生、よろしくお願いします。

──小島氏、壇上に着く。

本誌 では、反対派の方々からどうぞ。
岡本 大阪から来た岡本直之です。僕は反対派というより小島さんのおっしゃってることがウソくさいというか、ようわからんので質問したいんですけど……。たとえば、大川隆法とか創価学会とかエホバの証人とかありますよね。みんな、今が世紀末という、たいへん重要な時で、人間はどんどん退廃する。地球も破壊が進んで極限まで行くんやけど、我こそがそれを救うとか変えるとか言ってますよね。僕らから見たら、彼らが言ってることと小島さんがおっしゃってることと、似たようなもんに聞こえるんです。どこが違うんですか?
小島 プランがあるかどうか。現実の世界を変えるプランがあるかどうかですよ。ビジョンがあるかどうか。愛だの平和だの、みんな仲良く手をつなげば世界が変わるなんてのはビジョンでも何でもない。具体的に、今の日本で言えば、権力を握れるかどうかということですよ。現行の民主主義体制をこわしていかに政権を取れるかと言うことですよ。
岡本 でも、日本を征服するということは大川隆法も言ってると思いますが。
小島 いやいや。彼のはビジョンなんかじゃないですよ。なんかフワフワした霧みたいなものの中であいまいなことを言ってるだけだ。
岡本 でも、彼らから見たら小島さんの方が逆に霧みたいなものなんじゃないんですか?
小島 そんなことはあり得ない。
岡本 友達が霊友会というのに入っていて、ついて行ったことがあるんですが、自分らの会に入らないと救われへんと言うんです。創価学会にしてもエホバの証人にしてもやはり同じですよ。小島さんのも、ザインを信じなきゃ助からんと言うてますよね。
小島 いや。救おうとか助けようとか、そんな話は全然してない。バカは死にゃあいい。バカを救ってもどうしようもない。とにかく僕が言ってるのは現実の世界をどう変えるかということですよ。
岡本 現実の世界というのは霊的な世界とは違って?
小島 そう、霊的な世界の問題はもう処理し終わっている。今は、政治の世界と経済界、それに軍事面をどう結びつけてゆくかということだけです。
岡本 小島さんは自分のことをザインの分身とゆうてますよね。
小島 分身じゃあない。そのものだ、うん。
岡本 じゃあ、別の本体みたいなものがあると……。
小島 本体というのは誰でもありますよね。本体というのはその人の神の部分だから。それが、三次元の世界に入って肉体を持ったのが人間だから。
岡本 じゃあ、私にもここにいる肉体の他に本体があるわけですね。
小島 もちろん。ありますよ。エネルギーの本体というものがね。

──この後、岡本氏は前世を持ち出し、小島氏が古い魂であるとしたらそれだけ進化し神に近い存在であるのだがうんぬんというような、既に古くなった精神世界的発言をしたため、そんなものは何の価値もない無意味な質問であると小島氏に軽くあしらわれてしまった。そのため岡本氏は行き詰まってしまい、過激派青木氏に一時バトンを譲ることと相なった。

青木 あの〜。
小島 覆面を取れ。なんで覆面をしてるんだ?
数人の読者 そうだ、そうだ。覆面は取った方がいいぞ。

──青木氏、むきになって声のした方を振り返り、もったいぶって覆面を剥ぎ取る。すると、なんとその下からは、 目のまわりを黒マジックで塗りつぶした顔が出現したのである。

青木 小島ぁ、おまえはこの間ワンダーライフでくだらんことを言ってたなぁ。
小島 何がくだらんのだ。言ってごらん。論理的に言ってごらん。おまえが挑戦してきたんだろう?
青木 じゃあひとつ言ってやろう。おまえは警察権力、いや現行権力を否定しているよな。
小島 いや、否定しているが、否定していない。
青木 否定しているがしていないとは何だ! そこを論理的に説明してもらおうじゃないか。
小島 現在彼らは権力を握っている。しかし、ずーっとそうであり続けることはないということを言っているんだ。
青木 だったら言うけど、国会議員に対してもバカだ何だとヒステリックに言ってるじゃないか。
小島 ヒステリックになんだと? まあいいや。それで?
青木 今の議員に対して否定発言したよな。
小島 したよ。じゃあ、おまえは今の議員がまともだと思っているのか?
青木 思ってないよ。
小島 私と同じじゃないか。いったい何なんだ?
青木 国会議員にしても何にしても、決闘しようとしたら、必ず現行の警察権力が出てくるってことだよ。
小島 当たり前だ。
青木 現行権力が法律で正当化されている限り、決闘したって無駄に決まってるじゃないか。
小島 現行の法律に守られながらする決闘なんかない。決闘というのは、今も昔も真剣勝負だ。法律がどうのこうの言うくらいだったら決闘という言葉は使うな!
青木 だったらやってみろよ。精神力がそれだけ強いって言うんなら、肉体も強いはずだろ?
小島 何でそんな変な理論が成り立つんだ? 精神力が強い人間は必ずしも肉体が強いとは言えんだろうが! ホーキングを見ろ。ものすごい精神力の持ち主だが、彼は車イスでしか動けない。今君とホーキングが決闘したらどうなる? ホーキングに勝ち目はないよ。彼は車イスから立ち上がることもできないのだから。

──青木氏、それでも『精神力が強ければ肉体も強い』という理論を成立させようと食い下がる。

青木 だっておまえは車イスじゃないだろ?
小島 そうだよ。
青木 だったらやってみようよ。
小島 何をだ?
青木 オレと決闘を、だよ。素手でいいよ。素手で!

──と言いつつも、手に持っているヌンチャクらしき武器を離すことはできないのか、武器で机をバシバシ叩いている。さらに、突起つきの皮ベルトなど裸にでもならぬ限り素手とは言い難いとも言える状況である。

小島 なんだそれは! オレとやろうってのか? よし、じゃあこれからやろう。

──立ち上がり、椅子からおりる小島氏。椅子に立つ青木氏。小島氏、壇からおりる。青木氏、襲いかかる態勢をとる。本誌、思わず、条件反射的に止めに入る。

本誌 今回は言論を用いてということですので……。
青木 フン、うまく逃げたじゃないの。
小島 (語気を荒らげて)逃げてないよ、オレは!
青木 外へ出ようよ、外へ。
小島 今はここの主催でやっているんだ。それを続ける義務がある。
青木 それじゃあ終わってからやろうぜ。
小島 おう、やろうじゃないか。

──双方、かなりテンションが高くなったところで再び本誌の仲裁が入り、とりあえず青木氏もおとなしくひきさがることとなった。

本誌 はい、岡本さんどうぞ。
岡本 小島さんは、よく霊斬という言葉を使われますが、霊斬とはどういうものですか? 肉体が剣や刀で斬られたようになるのか、それとも肉体はそのままなのに既にやられていることなのか……。
小島 そうそう。肉体はそのままの状態ですよ。敏感な人はすぐに感じとりますがね。
岡本 (とぼけたように)ほう。

──再び青木氏の発言に戻る。

青木 おまえの思想は共産主義みたいなものだろう?
小島 いや、共産主義じゃあない。しいていえばナチズムだよ。ナチに近いね。
青木 どうしてナチに近いのか?
小島 要するに、神と魔は一つだという概念だよ。今までは神が偉いもので魔は汚いものだという概念によって、人類の歴史は創られてきた。それを覆えしたのがナチスですよ。人間誰しも自分の中に神の部分と魔の部分、あるいは言いかえれば、創造と破壊、正と反とも言える面を持っているわけです。それは、どちらが上とかいいとかいうんじゃないわけなんですがね。ところが、過去の歴史は、神のみが尊いというおかしな倫理道徳観念に縛られて、魔を完全に否定してきた。しかし、その中でナチスは、堂々と破壊を行い、人類に魔の部分を突きつけた。これは非常に意味あることですよ。
青木 ナチスの逆まんじ、ハーケンクロイツがその創造と破壊の破壊を意味してるんだね。
小島 そうだ。ザイン自身も、自分の中に創造と破壊、すなわちホワイトホール的な面とブラックホール的な面を持っている。まずは破壊してから生み出す、そういう、システムになっている。
青木 それは、現実の世界を破壊するのか、それとも……。
小島 現実の世界を既にどんどんこわしている。たとえば共産主義の崩壊、ソ連邦の解体、アメリカ経済の衰退など、みんなザインの遂したわざだ。
青木 それをどうやって証明するの? 証明できっこないじゃないか? それに、小島、おまえ今四十歳だっけ?
小島 ちがう、五十一歳だ。
青木 ならなおさらだ。おまえの寿命が、あと十年だか二十年だか知らんけど、途中で死んだらどうなるの? 今ここで、心臓マヒでポックリいかないとも限らないだろ、え?
小島 いやいやいや。必ず生きている間に証明されますよ。私が政権を取れば、完全に証明されますよね(と言いきる)。
青木 これはちょっとした同情心なんだけどね、もしもよ、万が一いや億分の一でもいい、政権が取れなかったらどうするの?
小島 そんなことはあり得ない。ザインは時間の神で、ある時間が来れば一 気にエネルギーが放出されてある現象が成り立つ、というふうにして次々と地上を支配して行くのだ。
青木 でも人間誰でもまちがいはあるだろう? まちがって政権取りそこねることだってないとは言えないよ。どうするの?
小島 この首あげる。
青木 そんなもん欲しくないよ。オレはさ、政権が取れなかった時に、下手なこと言ってない方がおまえがみじめにならなくてすむと思って……。
小島 オレは責任のないことは一切言わないよ。逆に言えば、確信があるからこそ言うのであって。
青木 じゃあ聞くけど、ザインの計画というのは具体的にはどうなるの?
小島 一九九五年までに政権を取る。遅れに遅れて一九九九年だね。
青木 自分がそう思いこんでるだけってこともあるよね。政権が取れずに人々から嘲笑されたら……。
小島 そりゃ不愉快でしょうね。でも自分が播いた種だからしょうがない。そのくらいの腹は決まっているよ。
青木 話は変わるけど、ワンダーライフに時霊とか距霊とか載っているけどあれは何なの? 距霊というのはふりかけみたいで僕は気にいらないんだけど。できれば違う言葉に変えてほしいと何度思ったかしれないんだけど──
(場内に押し殺した笑いが渦巻く。さらに青木氏の発言が続く。)
距霊というのは聞き慣れない言葉で多分あなたの造語だろうけど、あれを読んでいると難しくて言葉の迷路にはまってしまうんだよね。
小島 もちろん。距霊は私が初めて造った概念で、わかりにくいとは思いますがね。昔からある言葉に置きかえると直日霊ですよ。仏教で言えば、空とか無という言葉ですかね。ただ、それらの概念はひとつの次元ととらえていたのに対して、私はそこに、時間を司どる時霊界と、空間を司どる距霊界があることを認識したのです。そして、空間性を持たせるために距離の『距』をとって、距霊と名づけたんです。
青木 なるほど。そういう説明はワンダーライフにはありませんよね。
小島 いや、してあると思いますよ。ただ、それも含めて私の思想は非常に膨大な量になるんです。ワンダーライフではとても書ききれないこともあり、その他いろいろな所に書いてますがね。
青木 それは、自分の会の中で書いてるということですか?
小島 そう。私の話を仮説として受け入れてくれる人たちに対してね。
青木 『仮説』なんて自信のない話だね。
小島 いやいや。自信はある。宇宙は仮説だらけですよ。仮説でできている。宇宙に絶対的な真理なんてものは存在しない。たとえればね、玉ネギみたいなものですよ。むいてもむいても次が出てくる。
岡本 じゃあ小島さんの言ってることも、いずれは抜かされるかもしれないね。
小島 そう。越えられるかもしれない。
岡本 そしたら小島さんは詐欺師ですね。
小島 何で詐欺師になるの? たとえばニュートンがニュートン力学を唱え、アインシュタイン力学がそれを越えたからといって、ニュートンが詐欺師になるということはないだろう?
青木 ふーん。でも逆にワンダーライフではザインは絶対神みたいなことを書いてたよね。
小島 『今』という時間においてね。ザインというのは時間の神様だからね。未来のいつかの時間においては絶対神ではなくなるかもしれないね。
本誌 岡本さん、どうぞ。
岡本 今までの話を僕なりにまとめてみたんですけど、僕は小さい頃から絶対的な真理というのを追い求めてきたんです。そして、目に見えないものに対して、それでもそれを実証する方法は何かあるんじゃないかとずっと考えてきたんです。そして、小島さんならそれを証明する方法を何かお持ちではないかと思って遠路はるばる大阪から来たわけです。しかし、今までの話では、霊斬されても肉体は変わらず生きているし、距霊を改造しても現実に距霊のせいで変わったかどうかは証明できないということですよね。ですから、僕の求めていることの証明は得られなかったわけで、非常にガッカリです。(声を落として)これで僕の対決は終わりです。

──ここで青木氏、岡本氏に同情したのか、『証明』に関する発言をする。が、ちょっとはずしてしまったようである。

青木 そうだ、たとえば今ここで僕が距霊を改造しても、もしかしたら百年後に変わるかもしれないよね。もし変わるって言うんなら今やってみせてよ。五十人もいりゃあ一人くらいその場で変わる奴が証明されるかもしれないだろ?
小島 距霊の影響が肉体に出るまでに時間のズレがある。薬を飲んでも、すぐに病気が治らないのと同じで今ここで証明はできない。
青木 えーと、それなら小島さんが過去世でやっていたものに今すぐなってみてよ。岩でもいいよ。岩になってみせろよ。
(場内に笑い。)
小島 できないよ。だいたい、なぜオレがここで岩にならなきゃいけないんだ。岩になれたら偉いのか? 無意味なことじゃないか。

──目に見えないことをやたらと証明させたがる青木・岡本御両人の発言は、この後三十分に渡って続いたが、話に進展は見られなかった。

本誌 では、小島氏と激論対決組の発言はこのくらいにして、次に何か質問をしてみたい方々の発言に移ることにします。はい、どうぞ。
水越 ワンダーライフで宗教撲滅の記事が載ってましたけど、撲滅を行ってから現実に何か起こったのですか?
小島 ああ、それは出てますよ。大川隆法のフライデー事件とか創価学会と日蓮宗の闘いとかがそれですよ。
本誌 次の方、どうぞ。

──ここで、質問組の中からほとんど反対派と思われる人物が出てきて、一つの質問に延々とこだわり続けた。その人物とは…。

佐藤 小島さんは民主主義を否定なさってますけど、民主主義以外に何があるんですか?
小島 王政。絶対王政。
佐藤 過去の歴史で絶対王政がよかったことはないですよ。拷問とかギロチンとか……。
小島 それは、過去の絶対王政が不完全だったからでしょう。あれはエゴが創り出したもので、私がこれから打ち立てるのは普遍の創り出す絶対王政ですよ。
佐藤 それならなぜ、民主主義が生まれる前に転生してこなかったんですか? その方が早いでしょうが。わざわざ民主主義を倒す手間が省けて。
小島 違う違う。民主主義は民主主義で、それは一つの意味ある形体ですよ。
宇宙には無意味なものは存在しない。ただ、民主主義は、霊魂体の『魂』の表れであって、時間の流れは今『霊』の時代へと向かっている。これが何かというと、一ランク上の螺旋上にある絶対王政です。民主主義が存在したことは必要だったし、それを壊して次の段階へ行くことも必要なわけです。
佐藤 それじゃあ聞くけど、なぜ人間を全て滅ぼさないんですか? なぜあなたはサルとかゾウに生まれて来なかったんですか? 人間がいなかったら自然破壊もなかったはずですよ。
小島 人間も動物や植物と同じ自然の一部ですよ。全部滅ぼす必要ないじゃあありませんか。
佐藤 でも、その人間が、自然のバランスを崩し、地球を危機に陥らせたんですよ。あなたも含めてみんなサルとかゾウに生まれたら問題は解決するんじゃありませんか?
小島 なぜ私がサルとかゾウに生まれなきゃいけないんです? サルが言葉をしゃべりますか? ゾウがどうやったら政権を取れるんですか?

──この後、佐藤氏は“私の質問に答えていない”と、“サルかゾウに生まれればよかった”を執拗に繰り返したが、実りがないので省略する。場内がいいかげんうんざりしてきた時、いきなり斬新な質問が出て来た。

丹保 あのー、小島露観さんのぉ髪がうすいのと、腹が出ているのは、何か意味があるんですか?

──数秒の沈黙が流れ、場内は小島氏がどう出るか、かたずをのんで見守っている。

小島 ……意味は、ない。

(場内爆笑。)

──この後、傍聴人の中からも幾つかの質問が出た後、時間ぴったりをもってめでたく『言論対決の会』は幕をとじたのであった。
*      *
今回の言葉による対決では、編集部としては、もっと過激で、もっと内容のある対論会を期待していた。質問者の多くが、表面的な、自己主張だけの言葉で終わってしまったことが、残念ではある。
ワンダーライフは幕を閉じた。しかし読者のみなさんは、今後もこのような機会をどこかで見つけるだろう。その時には、相手の意見をしっかりととらえたうえで、明確に批判したり賛同したりする姿勢を持っていただきたい。

高橋克彦 『1999年対談集』はすごい(2)

高橋克彦 『1999年対談集』について、続けて紹介する。

前半では矢追純一、横尾忠則、五島勉など、著名人との対談が続いたが、お次は小島露観なる人物。
東大を卒業後、1年間企業に勤めた後、退社。学習塾講師をしながら瞑想生活に入る。独自の七光線占星学を確立。株式会社Z(ザイン)会長として1990年代の世界大変動期に備える企業戦略を指導。また2000年に展開する銀河皇朝を創設する戦士の育成にあたっている。
1990年頃はこういう肩書きだった。何だかよくわからない活動をしている人である。なぜこんな無名のひとが対談に出てきたんだろうか。
当時の『ワンダーライフ』編集部に心酔者がいて、プッシュしていたようだ。

小島露観は破局について語る。
大破局、大破壊といっていますが、それは『天の計画』なんです。地上を変えようとしているんです。人間が作ってきた『カルマ』の総決算であると同時に、その総決算を利用した『天の計画』、それが大破壊なんです。破局っていうと、人間のカルマだけが原因のように思われますが、それだけじゃない。それだけを言うのは、不公平ですね。破局は神の計画なんです。

小島露観は神について語る。

宗教の世界や精神世界では、よく「神は愛である」なんて言ってますね。ひたすら優しいものみたいに言うでしょ。ああいうのとは全く違いますよ。神は核エネルギーみたいなパワーそのものなんです。
ですから、愛の位置、魂に当たる人が、神のエネルギーの媒体になれるかどうかで、 破局の大きさが決まってくるんです。精神世界の人などが「愛は地球を救う」なんて言っていますが、そんなお題目では、全く通らない。逆ですね。
神のパワーは無目的で放射されようとしているんじゃない。地上を変えようとする意志なんです。
神は地上を破壊しようと、破壊して変えようとしている。破壊して進もうとしている。いわば革命ですよ。
(中略)
神には善も悪もない。あるのはパワーです。

小島露観は悪魔と戦ったのだと語る。

4年前にハレー彗星が来たでしょう。あの後、地球に、悪霊が跋扈しだしたんですね。私の周りにもいっぱい現れて、それで私は『悪魔戦争』に引き込まれたんです。1986年の6月29日からでしたね。
(中略)
太陽系に7大悪魔っていうのがいましてね。この7大悪魔と戦わねばならなんことになったんですよ。
悪魔っていうのはね、よくまんがに出てくるでしょ。黒い服を着て頭に二本角があるーー。あれと同じ格好してるんですよ。

このあと小島さんは奥さんともども、銀河の魔とか、更に高い次元の魔と戦うのだった。

この時にやっとわかった。
神と魔は完全に同じ、ペアなんだ、と。双子の子供なんですよ。
これは、いくら退治したってダメだ。神と融合させるしかないと思ったんですよ。ペアであるなら融合は可能ですよね。+と−ですから。
(中略)
白鳥座の通信回路を使って「神と魔の融合を行うから、おおくま座銀河団のこの星に集まれ」と流しましてね。来ましたよ、全員。
巨大なクリスタル・ドームの一方に私が立ち、その反対側におおくま座銀河の主神と女神が立ちましてね。私から見て左側に一列にわれわれの銀河系の神々が並び、右側一列にそれに対応する悪魔が並んだんです。
(中略)
で、神と魔の融合を果たすのである。
このあとは、海王星が霊的な世界を司ってきただとか、金星は精神世界を握ってきたというおはなしが出てくる。


小島露観はのちに、万師露観、伯壬旭(はくじんきょく)、伯魔壬旭(はくまじんきょく)軍帥などと名を変え、1995年頃は「古代帝國軍」を名乗って都内で街宣活動をし、さらにのちに全裸SEX教団と揶揄される「ザイン」での活動を行い、今は帝国ザイクスとなのってマイナーカルトの代表をやっているようだ。
つまりは、麻原彰晃にも大川隆法にもなれなかった人である。

なお、『ワンダーライフ』休刊後、編集長と編集部員の一部が小島露観と連動して一種の民族運動に取り組むようになる。
小島露観がらみの読みものとして、次のエントリーもどうぞ。

激論対決・小島露観VS読者


アカシック地球リーディング 5次元世界はこうなる (5次元文庫 (Zホ1-1))

荒俣宏・高橋克彦の岩手ふしぎ旅

2012/04/20

高橋克彦 『1999年対談集』はすごい(1)

おれのろくでもない読書履歴を開陳すると、今では入手困難になっている本、それも普通の人にはあまり意味のない、くだらない本ばかりになってしまう。
それでもめげずに、ご同好の諸氏諸嬢に向けて、紹介していきたい。




「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになったおかげで、ノストラダムス本や人類滅亡本やブームに便乗した宗教団体の勧誘本だとか、山ほど出版された。
今回、紹介するのはその中の一冊だ。
高橋克彦 『1999年対談集』、おれの手元にあるのは1994年の講談社文庫だ。親本は1990年に小学館から出版されている。
この本は、かつて小学館から出ていた『ワンダーライフ』で連載されていた高橋克彦の対談をまとめたものだ。
『ワ ンダーライフ』は『ムー』のライバルというべきオカルト雑誌。知る人ぞ知る怪雑誌だった。1988年に創刊され、1992年に休刊した。怪しげなトンデモ さんが登場する雑誌として一部で有名だった。ちなみに同時期、学研のローティーン向け『マヤ』、麻原彰晃がたびたび紹介されていた「トワイライトゾーン」 などもあった。
『1999年対談集』はトンデモさんオールスターズが群れ集う豪華な本である。
オカルト好きな作家高橋克彦がホスト。
ゲストは矢追純一、横尾忠則(2回)、五島勉、小島露観(万師露観)、あすかあきお。
本には収録されなかったが、UFO本でおなじみ、たま出版の韮澤潤一郎や糸井重里も登場した。
どうですか。豪華でしょ。
高橋克彦の意向により、一連の対談では「1999年人類滅亡」を意識した内容が語られる。1988年〜2000年あたりに、「来るべき1999年」についてオカルト界の巨魁が語っているところがミソ。で、それを2012年マヤ予言による滅亡の年に取り上げるわけだ。
対談の内容を少しずつ紹介していく。
なお、この本はのちに「見た!世紀末ー対談集」と改題された。

見た!世紀末―対談集 (講談社文庫)

まず、UFOブーム、ユリ・ゲラーブームの仕掛け人、矢追純一。
まず、UFO好きな高橋克彦は、UFOは黒船、矢追純一は吉田松陰だと持ち上げる。
矢追さんは日本人がみんな、前方の一点を見てまっすぐ歩いているので、「みんなに空を見上げてほしい」という願いをこめてUFO番組を作ったという。
矢追さんはさらに、人類はあと10年ほどでカタストロフィが来るんじゃないかと語る。2000年前後、おそくとも2030年頃までに日本は2千万〜3千万人までに人口を減らしているんではないだろうかと語る。カタストロフィを前提に生き方を変えようと主張する。

続いての対談は、横尾忠則さん。
横尾さんのかたるスピリチュアルな体験はなんか楽しい。
冒頭で横尾さんは、1987年から1989年まで宇宙人とコンタクトしていたと告白する。ある日の昼、ホテルのベッドでうつぶせに寝ていると、からだが30cmほど浮き上がった。次の瞬間、頭のなかに宇宙人3人が来るヴィジョンが浮かんだ。
宇 宙人は「あなたとコンタクトします」と言って、横尾さんの首のうしろに器具を入れた。それは受信器だった。あとでわかったのは、アストラル体に対する手術 だったということ。(人間は肉体、生命を担うエーテル体、精神力を担うアストラル体からできているのだという)しかも、横尾さんとのコンタクトには女性の パートナーがいたそうだ。横尾さん専門のラジオのような役割、チャネラーなのだ。横尾さんと女性は5万年前にコンタクトしてくる「声」の主から分離した魂 なのだという。
声の主は、「アーリーオーン」と呼ばれる大天使ミカエルの力の顕現の一部を持つ天使である。天使と宇宙人が共同で横尾さんにコンタクトしてきたのだ。
この女性のパートナーはかつてNifty-Serveでフォーラムを開設していて、アリオンの「神霊メッセージ」と称する詩のようなメッセージを流していた。口の悪い人は「宇宙イタコ」などと揶揄していた。ウェブサイトも開設していたが2003年に閉鎖されている。
とにかく偉い存在らしい。うん。…ミカエルの生まれ変わり、GLAの高橋佳子や、宇宙最高級神霊エル・カンターレの大川隆法とどっちが偉いんだろう。
横 尾さんはUFOに乗って南極の地下やチベットの地下に行った。横尾さんは夢だと思っていたが、アストラル体がUFOに乗ったのだという。また、UFOのな かで37歳の姿をした三島由紀夫に会ったという。ほかにも会う機会があってUFO以外で会ったときは軍服を着ていることもあるという。
「あと10年で人類が滅亡する」説に対して、横尾さんは、
「破滅の予言を信じることは危険です。その時期を想念によって早めることになりかねないからです」と返答する。天使からそう伝えられたそうだ。
コンタクトできる条件として、天使と宇宙人は5つ挙げている。
純粋、無邪気、素直(正直)、謙虚、全知全能なる存在への畏敬の念。

アストラル体で体験している、というのと夢や妄想は何か違うのか違わないのか。

3番目の対談相手は「ノストラダムスの大予言」を書いた五島勉。つまり1999年にまつわる状況を作り出したともいえる人だ。
おそろしいことにこの対談集のなかでは、いちばんおとなしく、マトモに思える。
話していることは「ノストラダムスの大予言」シリーズのなかで主張してきたことの繰り返しである。
五島さんは対談で述べる。
「ノストラダムスの予言が的中しなくたって、世の中が良い方向に行けば良い。そのうえで『ほら、昔、ノストラダムスの予言とか馬鹿なことを言ってたやつがいたな。全然当たらなかったじゃないか』っていうふうになった方がずっといいんですよ。『当たりませんでした。ノストラダムスと私の責任です』で終わりになる」
五島勉さんの思いはそのとおりになった。



後半は、ぶっ飛んだ話ばかりの小島露観(万師露観)、あすかあきおについて書く。


2012/04/18

テレビと日本凋落

おれは地上アナログ放送終了までブラウン管のテレビを使い続け、停波を見届けた。1988年に買ったビクターのテレビは思いのほか長持ちして、23年の長寿を全うした。
ただしブラウン管がダメになってしまったので色はきちんと出ず、画面は歪んでいたが、週に数時間視聴するかしないかの身には充分だった。
いま使っているのは、イオンで買ったPRODIA製32型液晶テレビだ。録画機能を備え、320GBのHDDも付属して39,800円。


iPadより安いっていうんだから、驚きだ。
まあ、テレビはタブレット端末の市場価値に及ばないものに成り下がったということななろうけれども。

このような無名メーカーのテレビはもともと安かった。海外で部品を調達し、海外の提携企業で組み立てて日本に持ってくるから。
しかし、国内のメーカーのテレビも安くなってきた。
量販店でテレビ売り場に行くと、AQUOS、REGZA、BRAVIA、VIERAといったブランドがバカみたいに値下がりしている。だって、32型が、2万5千円を切り、40型が3万円台、55型の3Dテレビが20万円を切っているという有様だ。
しかも、それでも売れていない。
2011年に国内で売れたテレビの台数は2,500万台。日本のテレビ市場は年間1,000万台で推移している。「地デジ移行」によって利益を先食いしちゃったから、きつい反動が来ている。
せっかくエコポイント下駄履かせてもらった効果もあっという間に消えてしまったのか、
テレビを作る企業がひどいことになっている。


ソニー赤字 過去最大 3月期見通し 電機3社総崩れ

ソニーは十日、二〇一二年三月期連結決算の純損益の赤字額が従来予想の二千二百億円から五千二百億円に拡大するとの見通しを発表した。米国のテレビ事業が振るわず、タイの洪水で商品の供給の遅れが出たことなどが要因になった。純損失の計上は四年連続で赤字幅は過去最大。
シャープもこの日、一二年三月期の純損失が、従来予想の二千九百億円から三千八百億円に拡大するとの見通しを発表した。パナソニックも七千八百億円の純損失を計上する見込みで、デジタル家電事業を主力とする電機各社は総崩れの状態となっている。
ソニーのテレビ事業は、国内に加え米国でも韓国メーカーなど海外勢との価格競争が激しくなり、一二年三月期に八期連続の営業赤字を計上する見通 し。加藤優最高財務責任者(CFO)は十日、東京都内の本社で記者会見し、巨額の赤字について「(経営陣として)重く受け止めている」と述べた。


今後はグループ従業員を一万人規模で削減することなどにより、収益の改善を目指す。加藤CFOは「聖域なき改革を断行していることの一面」と話 し、リストラを進める考えをあらためて表明。その一方で一二年三月期の売上高を六兆四千億円、本業のもうけを示す営業損益を九百五十億円の赤字とする従来 の予想は維持した。これに対しシャープは一二年三月期の売上高の予想を従来の二兆五千五百億円から二兆四千五百億円に一千億円引き下げた。テレビ事業の不振に加え、タブレット端末向けなどの液晶パネルの出荷遅れなども響いた。


パナソニック、'11年度は過去最悪7,800億円の赤字見通し
-「TVの赤字が他の黒字を相殺」。20型4Kは'12年第4四半期

日本国内市場では、地デジ移行の反動でテレビが売れない。
それだけではなく、世界市場でも韓国のSamsung、LG電子の後塵を拝するばかり。


テレビ市場が減少に転じる、ブランド別では韓国勢と日本勢で明暗くっきり
2011年第4四半期(10~12月)における薄型テレビの売上高ベースの上位ブランド別シェアは、韓国のSamsung Electronicsが26.3%を獲得しトップを堅持した。 同年第3四半期(7~9月)の23.0%から、さらに3.3ポイント拡大している。NPD DisplaySearchによると、この26.3%というシェアは調査開始以来、全ブランドの実績で最も高い数字だという。パネル種別でみても、 Samsungは液晶テレビとプラズマテレビの両方でトップシェアだ。NPD DisplaySearchの調査開始以来、プラズマテレビでパナソニック以外のブランドが首位に立つのは今回が初めてだという。
ブランド別でSamsungに続く第2位は韓国LG Electronicsでシェアは13.4%、第3位はソニーで9.8%だった。さらに日本勢がパナソニックの6.9%、シャープの5.9%と続く。
各ブランドの前年同期(2010年第4四半期)比の売上高を見ると、韓国勢2社はSamsungが18%、LGが2%とともに増加している一方、日本勢 3社はいずれも大きく減少した。ソニーが最も落ち込みが大きく、34%も低下した。パナソニックは19%減、シャープは30%減である。
テレビ市場ではソニー、パナソニック、シャープ3社が束になってもSamsungに勝てない。しかも日本のメーカーが液晶パネルをどこから調達しているかといえば、SamsungやLGだったりするのだ。
ほかの家電製品でも劣勢は否めない。
とくにスマートフォンやタブレット端末という成長市場では、土俵にすら上がれないのは残念というほかない。気がつけば、事業撤退するメーカーも多い。

で、シャープの液晶事業に台湾の巨大EMS企業・鴻海精密工業(Foxconn)が1,300億円出資して資本業務提携だという。
これについては下記ブログの考察に深く頷くばかりである。シャープはFoxconn傘下でappleや他のメーカーの孫請けになる命運だ。

鴻海精密によるシャープ買収をどう考えるのか?



パナソニックも7,800億というものすごい赤字を出していて、もしかしたらいちばんきついダメージを受けているのかもしれない。なんといってもプラズマを捨てられなかったのが痛い。プラズマテレビの市場は縮小の一途だったのに、莫大な投資をして工場を新設した時点でアウト。先読みできないのはこの会社のお家芸ではある。
松下電工とサンヨーを吸収したけれどもスケール・メリットは今のところない。お得意の白物家電分野では、今後マーケティングに長けた中国の家電企業と戦うことになる。

テレビ市場の焦点は、次世代テレビに移っている。
液晶やプラズマは儲からず、次なる技術革新、次なる放送規格で市場を創ろうとしている最中だ。有機EL、スマートテレビ、2Kとか4Kなどと言ったキーワードが飛び交っている。

はたして日本企業は韓国企業に勝てるのだろうか。追い上げてくる中国企業を追い落とせるのだろうか。

日本企業の凋落、とりわけソニーの凋落について、ある種の感慨を禁じ得ない。下記でリンクしている小田嶋隆さんのコラムをお読みいただきたい。
小田嶋隆さんは「ソニーというブランドが自分の愛国心を支えてきた」と言う。それはよくわかる。こんなすごい製品を作り出せる日本ってすごい、と確かにおれも誇りに思っていた。
appleの製品に触れては、これはソニーが出すべきだったとぼんやり思ったりもする。

ソニー、過去最大赤字の「衝撃」


宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカットを観た

「宇宙戦艦ヤマト2199」が少しだけ盛り上がっているなか、やっとこさ「宇宙戦艦ヤマト復活篇ディレクターズカット」を観た。どうしても「ヤマト」関係はチェックしてしまうんである。
監督の西崎義展が他界しており、制作に関与した形跡もないのにディレクターズカットが今出てくるのは変だ。まあ、観てみると実際は故人に敬意を表しつつ作られた<クリエイターズ・エディット>とでもいうべきものになっていた。「監督代行」として小林誠がクレジットされている。
あちこちに手が入れられていて、別物の映画になっていた。